車の中に放り込んでおいても、お店で食べる味を!

 夏の観光シーズン、ご来店のお客様が店で食事をされたあと「テイクアウト」のオーダーをいただくことがよくあります。
冷凍保存での販売になることを告げると、これから何日か北海道内を車で周るとのこと。クーラーボックスがあったとしても無理。旅行中に買った他のお土産といっしょに、車の中に入れておける
「常温保存形態」はできないものか・・。冷凍で販売を始めた当初から、気軽に持ち帰ることができるレトルト形態を考えていました。



常温保存を可能にするためには?

 レトルトとは常温で保存ができるように加工した食品の総称です。常温での保存を可能にするため、容器やパックに詰められた食品が腐敗、変質しないようその中を殺菌する必要があります。その殺菌の度合いを示す値が「F値」と呼ばれているものです。

 食品衛生法ではこの殺菌の度合い「F値」を4以上と定めています。この数値をクリアしていますと、日常に存在するすべての菌類(ボツリヌス菌やウェルシュ菌などなど)を死滅させることができます。ちなみに「F値」4をクリアするためには、一番熱の伝わりにくい食品の芯温で120℃で4分間加熱する必要があります。


作っているのは、あくまでもおいしいく食べられるスープカレー!

 水の沸点は通常100℃。この温度で「F値」4をクリアするためには、食衛法では500分間熱処理しないといけない規定になっています。(積算方式が非常に複雑なので、導入した機械はコンピュータで管理しています。)100℃で500分の調理時間は、容器の中の菌は死滅しますが、食感や風味など食べ物としての要素を満たすことが難しくなります。

 そこで特殊な機器が必要になります。管理された高温度空間を作り出す装置や衛生的で高強度のパック、それを真空状態に限りなく近くする機械など。そして安全な食品をしての値「F値」をクリアするための機械の信頼性と算出、データ管理などがバックボーンとして必要不可欠になります。


腰をすえてとりかかりました。

 実は、この機械及び付帯設備を導入することを計画してから今現在製造に至るまで、約一年かかりました。
実際に機械を導入して商品を製造販売している関西方面の工場の経営者に直接お会いし、製造工場を見せていただいたり、店で販売している冷凍パックの中身を別のパックに入れ換え、実際機械にかけてみたりもしました。この時の長時間に渡るレクチャーや問答は、後々のいろいろな障害を乗り越える大きな力になり、また食に携わるものの深みやおもしろさを感じました。カルチャーショックというものでしょうか。

 04ー6月に導入してから試作品の製造、試食、データ分析、レシピの見直しを半年程続け、なんとか納得のいく形がみえてきました。そこからまたクリアしなければいけない難関がありました。食品として安全であるという認可を受けることでした。



北海道で初めての機械導入に行政もあたふた。

 機械一式、北海道では初めての導入だったので、保健所関係が対応しきれない状態でした。安全性を保てる機械なのかどうかや細菌検査の方法、パックの安全性、強度、製造施設の安全性などなど。
こころもとない行政対応に逆に不安を感じ、細菌検査は東京方面にある検査機関で何度も検査を依頼し、そのつど異常なしとの結果に、逆に菌が出る温度と時間までデータを出し、安全性を確認しました。
結局、初めてのことだからの一点ばりの対応に、機械の開発担当者に本部(東京)から倶知安保健所まで来てもらい、安全性を説明するという事態になり解決を見ました。
ニセコカリー小屋(保健所など公的機関認可済み 倶知安保健所 食衛第41号)



本州地域に比べ北海道は保存形態に遅れをとっているかも知れない!?

 私ごとになりますが、実家の家業が魚肉を使った商品の加工販売をしています。小さいころからたくさんの魚に囲まれて、それらがいろいろな製品に変わっていくのをずっと見てきました。北海道は水産物、農産物は最高においしい。それらを旬の状態で本州方面に輸送するための加工、保存方法を確率すればもっと北海道の産物が食卓に並ぶのにと思っていました。大企業の資本力のみがそれを実現し、個人のアイデアがなかなか生かせない現状を今回の認可を受ける過程で再認識した次第です。北海道発の名物「スープカレー」ニセコ版をお届けするために一年間奔走しました。



安全性へのこだわり

 ニセコカリー小屋のレトルトスープカレーの安全性の基準F値は8以上(レトルト商品大手の値と同等)(カリー小屋の実際値は10以上になっています。)に設定しています。この値は常温保存1〜2年間できる数値ですが、風味などのフレッシュさを味わっていただきたいので、常温3ヶ月位を目安にしていただいています。冷蔵庫に入れておきますと、それ以上充分保存できます。
保存料などの添加物は一切使用しておりません。



ひとつひとつ手作業で作っていますので、品切れの際はご容赦を。

 製造初期なのと店鋪営業も兼ねていますので、生産量が少なく大変ご迷惑をおかけしております。
生産量が安定してきましたら、新たな商品開発も手掛けていきたいと考えておりますので、またホームページにてお知らせ致します。