このレポートは、今年2001年の1月から3月までスポーツニッポン」の温泉コラム「後志(ニセコ周辺)温泉図鑑」の中で紹介した温泉記事の原稿です。直接私(サイト管理者)が、温泉経営者の方にお話を伺ってまとめたものです。ニセコ周辺の温泉場10ケ所を、ツウの温泉を味わいたい方のために、厳選して取材しました。ニセコ周辺の温泉めぐりに、予備知識として役立てば思います。

『湯本温泉 ロッヂチセハウス』(閉館)

人呼んで『ニセコキング』、ナチュラリストのロマンがにじみ出る骨太温泉。

 昆布温泉街から道々66号線、通称「パノラマライン」を山手の方に車を走らせると、ゆで卵のにおいがしてくる。硫黄系温泉特有のにおいだ。もう少し登って行くと湯気を上げる白濁した直径70〜80Mの池、ここが大湯沼だ。地下から湧き出る温泉が、巨大な池を造っている。この湯を引き込み利用しているのが、3軒ある湯本の温泉施設だ。その一軒、『ロッヂチセハウス』をご紹介しよう。
私が、こちらの温泉に始めて入ったのはもう25、6年前。当時建物はユースホステルとして利用されていて、自転車旅行の途中に一晩の宿として泊めていただいた時である。ユースで宿を経営している方をペアレントさんと呼ぶが、そのペアレントさん、あとで知ったが、ニセコの自然を語らせたらあの人をおいて他にはいない、人呼んで『ニセコキング』と言われた「織笠 巌(いわお)」さんだった。昭和26年に開業してから毎年訪れる東大や北大の客人たちをニセコ中案内して回り、その結果与えられた称号がニセコキング。そして、山岳ガイドというだけではなく、ニセコ山中で40名もの遭難救助を行った筋金入りの山男でもあった。
 浴室には大小4つ(男湯)の湯舟があり、それぞれ温度、微妙に泉質も違う。露天風呂からはここの施設名のもととなったチセヌプリが望め、泉質はもちろん硫黄泉。以前から感じていたことだが、同じ泉源なのにここは他の2軒の施設に比べて濃くて熱い。今回の取材でその件を聞くと、他の施設は機械で汲み上げているのに対して、ここは大湯沼のそれが自然の落差で直接流れてくるので、濃くて熱いということである。なるほど!そして、湯本温泉にあってここでしか出来ない入浴方に「ドロパック」がある。湯舟の底にたまった泉質の素を体に塗ってダイレクトに温泉効果を得るというもので、成分が濃いここだけの究極の入浴方だ。
硫黄泉の超ヘビーなこの温泉と、ニセコの山々を闊歩する骨太なキングのロマンがオーバーラップする。ぜひ一度、足を運んでもらいたい。

<問い合わせ>ロッヂチセハウス=磯谷郡蘭越町湯の里680ー2=(TEL0136-58-3063)☆通年営業、8時〜20時☆効用 糖尿病、神経痛、慢性関節炎など。 入浴料  大人500円、子供300円